川村元気さんの長編小説、億男(おくおとこ)。
この映画の感想や、川村さんが億男をとおして伝えたかったことなどの解釈を書いていこうと思います。
なるべくネタバレしないように書くつもりですが、勢い余ってしまう可能性もあるので、ネタバレNGな方は以降はお控え頂けますと幸いです。
しかし、高橋一生さんと北村一輝さんが素晴らしかった。
億男の映画の考察とか感想とか何やかんや
先日ふと思い立って、もともと観る予定のなかった億男(おくおとこ)の劇場版を観るべく映画館へ足を運びました。
思い立ったきっかけはバンプオブチキンの主題歌「話がしたいよ」をたまたまコンビニで聴いて、恐ろしく感動してしまったから。完全にバンプがきっかけです。ありがとうバンプオブチキン!笑
今のところ、特にネタバレを書くつもりはありませんが、熱がこもって書いているうちにストーリーの核心に触れるようなことをうっかり書いてしまう可能性があります。
ですので、これから億男を鑑賞する予定かつネタバレを読みたくないという方は、申し訳ありませんが、ここで戻るボタンを押して頂くか画面上部の×ボタンを連打してページをお閉じ頂けますと幸いです。。。
億男あらすじをおおまかに
さて、そんな億男ですが、タイトルが示すとおりの、ズバリ「お金」を題材にした映画でした。
佐藤健さんと高橋一生さんという、大人気俳優さんに加えて、沢尻エリカさん、北村一輝さん、千住清人さんという濃厚なキャストたちが、それぞれのお金の在り方と哲学を示していくといった内容です。
鑑賞後に、個人的に思った感想としては「今の時代にこそ、こういうテーマの作品が必要だよなー」というもの。
単純な「おもしろい」「つまらない」という二元論で済ますことが出来ないほど、深く考えさせられる映画だったように思います。
佐藤健さん演じる大倉一男が宝くじを当てることで手にした3億円。それが一夜にして盗難に遭い消えてしまいます。
3億円を持ち去ったのは恐らく一男の親友である古河九十九(演:高橋一生さん)。
消えた3億円と九十九の居場所を突き止めるため、一男は九十九が過去に立ち上げた会社の創業メンバーたちを訪ねるのだが・・・というあらすじ。
億男の登場人物たちが語るお金の価値観
・失踪した兄の借金を肩代わりするために、図書館の司書とパン工場勤務のダブルワークを余儀なくされていた男。
・フリマアプリ会社として大成功を納め、巨万の富を得るも、お金の本質の残り1%だけがどうしても分からない男。
・金持ちを億男と呼び、それ以外の人間を雑魚と称するパリピ女子。
・3つの会社を経営し、競馬場のVIPルームで億の金を転がす億万長者。
・自己啓発団体?新興宗教団体?の教祖を務める怪しげなマネーアドバイザー。
・お金とは無縁のような生活を送りながら、それでも札束に囲まれていないと安心できない専業主婦。
彼ら彼女らがお金に対してどういう価値観を持ち、日々どういう姿勢でお金と向き合っているか?を追いかけていくというのが億男の物語の中核です。
「人それぞれ」という言葉がこれだけ氾濫している現代の世の中で、ある意味で最もフェアなのがお金という存在ではないでしょうか?
年俸1億円のメジャーリーガーは誰がみてもスゴイ!となります。どこかに寄付をするのでも、その金額が高ければ高い人ほど社会貢献度も上がっていくと言えます。
一目瞭然に、その人を表す要素の一部を定量化して簡潔に表すことができる、シンプルな要素がお金でしょう。
ただし、そんなシンプルな媒体にも、当然「人それぞれ」という多様な価値観が付きまといます。
お金そのものには感情もないし意思もありません。ごくごくシンプルなモノと交換するための媒体なのですが、扱う人間の価値観はそれこそ人の数だけあると言えます。
お金を手にいれることで幸せになった人もいれば、不幸になった人もいます。お金を手放すことで不幸になった人もいれば幸せになった人もいるのです。
「生きていくためにはお金が最も必要だ!」と語る人がいれば、
「お金なんかより大切なものがある!」と反論する人もいます。
「お金なんかより大切な〜とか言ってる奴は本当にお金に困ったことがない奴だ!」と憤る人もいるでしょう。
そして物語の登場人物たちの大半は、お金に対して執着心が非常に強かったのです。
川村元気さんが億男をとおして伝えたかったこととは何か?
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私自身の個人的な価値観をお話しさせて頂くと、お金というのは交換手段のために存在する媒体であってそれ以上でも以下でもありません。
「お金なんかより大切なものがある!」という言葉はそもそも当たり前で、お金より大事なものがあるからこそ、お金という存在が意味を成すのが本来でしょう。
うまい棒を10円で買う人は、うまい棒に10円以上の価値があると思うからこそ10円を支払うのです。
世界中でお金が一番なのなら、世界中の誰もがお金を使おうとはしないはず。お金より大切なものがあるからこそ、お金を使ってそれらを手に入れ、守り、活かしていかなければならない。
だからお金は大切だ、というのが私の勝手な価値観なのですが、、、
その感覚が、主人公を含めたほとんどの登場人物には欠落しているように感じました。
ただひたすら、「お金そのもの」という虚構の概念を追いかけ回しているだけで、本当の意味でのピュアな「欲望」というものが欠如しているように感じられたのです。
そういう欲望をしっかりと持っていた登場人物は
・「子供の習い事を続けさせてあげたい!」と心から願う一男の妻
・「自転車が欲しい!」と密かに想う一男の娘。
・「お金というものを知りたい!」と好奇心に突き動かされる九十九。
この3名だけなのではないか?と。
一男は「借金を完済して妻子と暮らしたい!」という欲を覗かせていましたが、それ自体がゴールになってしまい、そのあとのこと(妻と娘にどんな風に接し幸せを感じさせてあげたいか?)を完全に見失っている描写が随所に見られます。
妻子を幸せにしてあげられるかどうか?は自分自身にかかっているのに、その責任さえもお金に押し付けてお金さえあれば万事解決と誤解してしまっているのです。
欲望として本当に大切なのは、「借金を完済して妻子と暮らしたい!」の向こう側にあるべきものなのに。。。
その点、一男も「お金という幻想を追い、お金という幻想に追いかけ回される」ピュアな欲望の欠落した1人ということができるでしょう。
なんというか・・・大切な家族のことなのに、目が¥マークになっているんです。ハートマークになっていないんですよね。
おそらく、億男の原作者である川村元気さんは「人間の欲をもっと素直に解放しようぜ!」ということを表現したかったのではないか?と私は勝手に考察します。
先に私が勝手な価値観として自説を述べたように、お金というのは交換の手段に過ぎません。
”交換”という要素が欠落したお金はただの紙切れでしかなく、そしてただの紙切れを何億枚集めたところで、それで心が潤うほど人間は高尚な生き物ではありません。
お金と引き換えたいと心から願う対象がなければ虚しいだけではないでしょうか?
現代社会では「お金を稼ぐ」ことを卑しいことだと決めつけ、自分の欲を心の内に閉じ込めたままにしておく人が多いような気がします。
ですが、お金を稼ぐこと自体が目的ならともかく、お金より大切なものを心から望む欲望というのは、人間が生きていく上で絶対に必要な活力源だと思うんですね。
そういった欲を正直に解放し、お金より大切なものと引き換えるためにお金を稼ぐという行為そのものは、人として美しいものではあっても決して卑しいものではない。
だから、「欲望を止めるなよ」ということを川村元気さんは伝えたかったのではないだろうか?これが私の解釈です。
億男のキャストMVPは北村一輝!
そして億男のキャスティングも素晴らしかったです。
佐藤健さんの何でもこなせる安定感のある演技は流石!の一言です。今回の一男役もバシッとはまって安心して最後まで観られました。
高橋一生さんも、内気な吃音者で大金持ちという複雑なキャラクターを見事に演じられてましたし、迫真の落語シーンも素敵でした。
沢尻エリカさんの、楽しそうに振舞っているんだけどどこか影がある絶妙なニュアンスが名演によって醸し出されていましたし。
そして何より!個人的にツボだったのは藤原竜也さんと北村一輝さん。漫画の登場キャラみたいにアクが強いのに、どこかリアリティがある役所はさすがの一言。
個人的なキャストのMVPは北村一輝さんかなー?食い気味で関西弁で人をおちょくり、まくしたてる様はまさに狂気!
今までの作品では決して観られなかった、激変した新たな北村一輝の側面を目の当たりにすることができたような気がします。
高橋一生さんも北村一輝さんとダブル首位でMVPかも。九十九という難しいキャラクターをあんなにカッチリ演技できるなんて。。
もはや高橋一生が九十九を演じているのか、九十九が高橋一生を演じているのか分からなくなるレベル。笑
まとめ
億男、個人的には大満足&考えさせられる映画でした。映画を観終わった後の興奮状態のまま勢い任せで書いてしまったため、かなりとりとめのない文章になってしまったと思います。
劇場で公開されているうちにもう一度スクリーンで観たいと思った映画は久しぶりです。。。
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